2020年春にスケッチを作成、その後1年の空白の時を経て、2021年初夏に完成された。

“Proliferation”というタイトルを和訳すると、「増殖」（もしくは「拡散」などとも訳すことができるだろう…）となるが、いったい何が「増殖」するのだろうか。作曲者としては、その問いに明確な回答を用意しているわけではない。しかし、それが物理的なものか、精神的なものか…は、さておき、ここ数年の社会情勢に影響されていることは、確かだと思う。希望が増殖すれば、絶望も増殖する…。そして、絶望が増殖すれば、希望も増殖する…。この楽曲自身が「何か」を求め蠢いているような気がする。それが「何か」はわからないが…。

演奏に際しては、確固たるBeat感を持った屹然とした演奏を心がけてほしい。相当、体力を必要とする楽曲であるとは思うが、演奏中の体力低下により誘発される諸問題…（例えば、アンブシュアの乱れ、必要以上の身体の力み…等）は、是非、練習等を通じてクリアしてほしい。オクターブ記号は、可能な限りその指示に従うことが好ましいが、高音域の演奏が不可能な場合、指示に従わなくてよい。運指等が極端に難しくならないように配慮してある。是非、様々な方が様々なシチュエーションで「挑戦」してほしい。しかし、部分的に難度が高い箇所を設定することでエチュード性を持たせている。（つもりである…）2020年、第31回TIAA全日本作曲家コンクール審査員賞受賞作品。

Bass Clarinet in B♭